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Kobe, Hyogo/Nov. 2020
 7月の週末の午後8時を過ぎた頃にかかってきた電話の主の声は余りにも暗く、そもそも設計事務所に電話してくる人が暗い声を出す理由も無く、一度相談したいというので何事かと思ったのが始まりだった。
紆余曲折はあったものの、新型コロナの波も収まることはなくその折に新規出店というのはなかなか勇気のいること。しかし、これを追い風として考えることもできる。
以前から気になっていた食品衛生という観点と新型コロナを追い風に変え新しい店舗形態を試みることに。 従来の店舗形態では、前面道路から壁で仕切られ扉を開けて店内に入る。そこに並べられたパンをトレイに自ら載せ会計を済ませる。これが、新型コロナによって個包装を強いられレジの前にはビニールカーテンがぶら下がっている。これによって、焼きたてのパンが出せなくなってしまった。
今回の店舗では、前面道路に面したシャッターを開けると目の前には、大きなガラス張りのショーケースがある。その向こう側とこちら側は、完全に仕切られている。ショーケースに並んだ全てのパンには、番号が振られておりバインダーに挟まった紙にその番号と個数を記載し、ショーケースに設けられたポストに投函する。それをスタッフが丁寧に取り分け袋詰めをして渡す。 これにより、焼きたてのパンは衛生的に最後まで保たれている。
閉店間際のお店を見ていると近所の小さな子供が一人で来て一つだけパンを買って帰っていった。
従来のお店だと閉店間際に入った店内で好みのパンがなかっても手ぶらで帰ることへの抵抗を少なからず感じている。その心理が閉店間際店内に入ることを躊躇させているかもしれない。
しかし、通りに面して歩道を歩く人がフラット立ち寄ってそのまま去っていく姿をみていると、このお店の形態は衛生面に特化しただけでなく心理的な敷居を取り払っているのかもしれない。
11月の週末の午後6時過ぎた頃、店主は少し白い粉のついたエプロンをしたまま店先に現れ、毎日毎日完売で有り難いと笑っていた。
Photography:S.Yamashita

Side field Bread サイドフィールドブレッド
神戸市灘区岩屋北町5丁目2-21-101

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