KMR

Uji, kyoto/Nov. 2013
 南米パナマに住むクナ族の民族衣装に使用されるモラという飾り布がある。色の違う布を重ねて縫い、模様の形にくり抜いて作るそうだ。そのモラを全国に教えまわっているクライアントは、1年の1/3程度を国外も含め出かけている。
 昭和初期の元の住まいである本宅は、何度か手を入れたもののトイレは汲み取り、追い焚ききの無い冷たい風呂、食器棚が遠く離れた使い勝手の悪いキッチン、そしてなぜかその横に洗面台がある。週に数度、そこにモラを習う生徒達もやってくる。大量に拡がる布に囲まれた日々から解放されるには、心地よいという言葉からは遠い空間だった。
 本宅と平行して建つ新たに手に入れた長屋を中心に、プライベートで寛ぐ要素とパブリックでもてなす要素を併せ持った空間を作る。
 新しく手に入れたのは、本宅と同時期に建てられた三軒長屋の二軒分。その内一軒をつぶす。いわゆる減築だ。其処にのっている今ではもう手に入らない古い瓦を取り除き、古い曲げ梁を生け捕りにする。土壁で構成された建物の解体は、雨の日が良い。兎に角細かい土埃が舞う。残したもう一軒の建物は耐震性を考え、新たな耐力壁を計画。胴差しから上部の構造をそのまま残し、柱の配置を計画し直す。建て直すに柱は、減築した建物の曲げ梁を利用。大きな空間に太い曲がった柱。この存在感が空間に良いメリハリを生んでいる。天井の野地板の下にたっぷりと断熱材を入れ、古いサッシを全て交換。巾広のフローリングには床暖房を施す。長さ2.5mもあるセンの木で作ったテーブルは、10人掛け。その上部には、長さ2mの銅板を叩きだして作った照明器具が吊られている。
Photography:S.Yamashita

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