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Ashiya, Hyogo/Feb. 2004
 年も押し迫った師走、一通の不可解なメールが届いた。確か3行から4行程度の短い文章だったと思う。「今年の秋に新築した家を改装してほしい、どうもピンとこない」とその中の1行に書いてあった。これは、新種の何かかとかなり慎重に返信の文章を考え、相手の本音を引き出そうと試みたが、結局なんにもわからなかった。数回のメールのやり取りをしても。とにかく一度現場を見て欲しいという事と、とにかく現場を見ないとわからないというのが慎重に事を運んだ結論だった。
 芦屋市と神戸市の東 東灘区との境に建てられたこの家は、南側のバルコニーから大阪湾を一望できるとっておきの場所に建っている。しかし、最寄の駅からは徒歩で30分近くかかりバスも走っていない。車での移動が不可欠な所だが知る人ぞ知る穴場といえば穴場だ。近所では、有名人の姿を目にすることもある。そんな穴場の一角に建つ1階鉄筋コンクリート造と2、3階木造の混構造住宅だ。
 確かにピンとこなかった。申し訳ないが、地図を頼りに目的地を目指して来たが、もし対向車が来なければ危うく通り過ぎてしまうところだった。建築プロデュース会社を介して建てられたこの建物。一般的な改装のきっかけは、使い勝手が悪かったり単純に古かったりする場合が多い。問題は比較的はっきりし、浮き出ている。しかし今回は違う。新築のこの建物から問題を探し出し、ピンとくるようにしなければならない。非常に難しい。まずは少しぼやーっとしたこの導入部分の空間を引き締める。メリハリがないのがこの建物の特徴だった。
Photography:S.Yamashita

 

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