PAT

Kobe, Hyogo/Apr. 2012
 最初のメールには、契約を進めているという物件情報が添付されていたので、スイミングクラブの帰りに立ち寄ってみて驚いた。物件の隣は、場末のスナックという言葉以外に適切な文言が見つからないような店。契約を進めている場所も明らかに元スナック。さて、どうしたものかと思っていたのだが、諸事情で別の場所で計画することに。
 阪神青木駅周辺は、阪神電車高架に伴い色々と整備が続いている。線路だったところには新たな道路が設けられ、線路で分断されていた南北のエリアが繋がり未知の可能性がある。
 ここに数々の名門店で修行してきたパティシエが店を構える。
 店頭に置くパティスリーについてヒアリングをしていく中で決して気を衒わない普遍的な物を提供していきたいと強い信念が感じられた。其の想いの通り店の名前は、最初からPâtisserieAuthentic(パティスリー オーセンティック)に決まっていた。
 もともと居酒屋さんだった店をスケルトンにしそこからの工事だ。コンクリートの床に凛とした天井の高い空間の正面には、カラマツの合板が森の静寂感を醸し出している。ショーケースの上部には、全長2.5m以上ある流木が吊り下げられ店内のわずかな気流に少し揺れているように感じる。普遍的な商品を邪魔することのない内装からロゴマーク。
 一見平和そうに見えた世の中も突然パンデミック、戦争と見通しが立たない世の中で普遍的なものへの価値が改めて問われているように思う。決して見た目は派手では無い、しかしもうそういうものはもう要らないと話すシェフの目に迷いはなかった。
Photography:S.Yamashita

PâtisserieAuthentic(パティスリー オーセンティック)
神戸市東灘区青木5-4-15

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