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Aug./2003
 この建物は、父と母の終の住処である。
 僕が育った家は、計画地近くの小さな駅の側の静かで落ち着いた所にあった。しかしその駅周辺は震災後再開発の波に巻き込まれ、家で過ごす時間が比較的長くなった2人は、もう少し落ち着いて過ごせる場所へ移住することを決意した。
 計画地は、阪急御影駅の山側、敷地までの道すがら小原流家元の緑豊かな坂、振り返れば神戸の港を見下ろす。この風景が気に入った。

 計画建物は、次の3つを軸に考えた。
・これから先、大規模なメンテナンスを必要としないこと。
・日々のエネルギー消費について前向きに考えること。
・日常に少し彩りを添えること。
 計画建物を構成する部材は、木とコンクリートと鉄のプリミティブな材料で、多少のことでは動じず時と共に変化していく様を楽しみたいと考えている。
 建物外観は、RC造の建物本体を独立した木の鎧で包んでいる。この木の鎧の役割は、コンクリートの保護と室温の外気温による影響の緩和である。鎧の下は断熱材を打ち込んだ外断熱とし、室内側にコンクリート蓄熱容量を確保している。南面には庇を設けた開口を取り、夏場は日差しを抑え冬場は日差しを取り込んでいる。これは得たエネルギーを何かに変換するのではなく、熱を熱として利用し、風を風として利用する素直なエネルギー利用である。
 建物構造は、RC造のラーメンと木の架構を組み合わせている。これは単純な2階建ての独立した2層の建物ではなく、建物全体を1つの大きな空間と考えその空間を上下に区切った形である。薄い板材は、上下階の足音や声を忠実に拾い、お互いの気配を感じられるようにしている。これは2人しかいない生活では非常に重要な事である。
 吹抜けのあるアトリエ。庭に面した浴室。外部に繋がるダイニング。天井が高く屋上の様子が垣間見えるリビング。全ての部屋が均質で完結した空間ではなく、他の何かと繋がっている。そこにいると何かしたくなる衝動に掻き立てられるような、建物が精神に及ぼす影響の可能性を探究している。隙を与えない緊迫感が満ちた空間ではなく、少しぐらいだらしなくしても、それに左右されない懐の大きな空間を創ることを目指した。

 ここで暮らす還暦をとっくに過ぎた2人が、まったく新しい環境においても、多分今まで築いてきた生活習慣を繰り返すことは目に見えている。今まで気付かずに見過ごしてきたような事を感じ、それが日常生活にほんの少し彩りを添えることができれば、嬉しく思う。